小さな幸せ (4)

確かにそのとおりだ。いや、包茎のことじゃなく。でも、僕は僕なりに努力したと思う。努力したって手に入れられない幸せもある。それはわかってはいるつもりだけれど。

「プレゼントは…僕はいいです。それより、じゃあ僕が真剣に、本当に純粋に彼女の幸せを願ったら、それをプレゼントにして届けてもらうことってできますか?」

「うーん、基本的には“収集”は昨日までで終わってるんだけど、特別にやってやるか。ただし、本当に純粋じゃなきゃダメだよ。それはつまり、究極的には、クミコさんが他の誰かと幸せになることを心から祈れるか、ってことだよ」

「…できる、と思います」

「届けた小さな幸せだって、その誰かと一緒に共有するかもしれないんだよ?“あ、流れ星!きれい!”“流れ星よりクミコのほうがきれいさ”“もう、ミタっちったら〜”とかね」

「え、クミコさんの彼氏はミタっちって言うんだ…」

「いや、知らないよ、例えばの話。でも仮にミタっちだとして、彼女とミタっちの幸せを、本当に願えんの?」

「彼女はミタっちが好きなんですよね?ミタっちも彼女を愛してるんですよね?それなら…願います、二人の幸せを」

「だからミタっちは例えなんだけど…まあいいや、よっしゃ、じゃあいっちょやったるか」

オッサンは後部座席から取っ手のついた白っぽい機械を持ち出し、僕の胸に当て、スイッチを入れた。機械は駐車場に甲高いモーター音を響かせ、僕のコートの胸の部分を吸い始めた。

「…っていうかこれ、ハンディクリーナーですよね?」

「まあ、似たようなもんだ、仕組み的には。オッケー、収集完了」

スイッチが切れると、駐車場はまた静けさを取り戻した。コートが吸われた形のままふくらんでいる。

*  *  *

「んじゃ、メリークリスマス!」

サンタのオッサンは車に戻るとクラクションをひとつ鳴らし、駐車場を出て夜の街へ消えて行った。もちろんオッサンがサンタだなんて、信じたわけじゃない。話につきあってやっただけだ。ナショナルって書いてあったし、あの収集機。っていうか、ハンディクリーナー。

でも、オッサンにはいいきっかけをもらったのかもしれない。かなわない恋を吹っ切るきっかけを。クミコさんが今夜、幸せな夜を過ごしていればいい。そんなふうに純粋に、心から願える自分になるための。

小さな幸せを見つけてほころぶ彼女の笑顔を想像してみた。素敵な笑顔だった。隣にいるのは僕じゃない。でも彼女の笑顔は、世界をちょっとだけ、いや、とっても明るくする。

クミコさん。

小さく声に出してみた。声は白い息になって、イブの夜空にふんわり消えていった。

*  *  *

僕は歩き出した。鞄の中で携帯が鳴っている。仕事の電話か出会い系メールか知らないけれど、もう少しひとりのイブの夜を味わいたくて、僕はそのまま歩き続けた。

———————–
メリークリスマスです.
商店街の福引きに挑戦したら
4等で映画のチケット
当たっちゃいました!
もしよかったら今度一緒に
行きませんか??
          クミコ
———————–

「小さな幸せ (4)」への15件のフィードバック

  1. 年下の子に片思いしている者です。
    その子の幸せを純粋に願うなら、自分の想いも不順なものになってしまうかもしれない、か・・・。心にしみます。。。

    主人公君とクミコさんの関係がうまくいきますように。

  2. クミコさん・・妙にリアルだ。

    加地さんは、、12/16付の中澤聡太くんのBlogにて、アップされてますね。 たまらんです。

  3. サンタが年中無休なのとその訳に納得してしまった。
    あとはささやかな幸せを見つけるかどうか
    それは自分だがんばれ自分。

  4. 純粋に今年中に加地さんがゴールする事願ってます。できれば聖夜の夜に。
    もちろん、ゴールの方向は………。ぶははは。

    kajidaisanjiさんにも素敵なクリスマスを願っていますね。メリークリスマス。

  5. あたしの小さな幸せ…カジオログが更新されたとき〜♪
    加地さんの年1ゴール、あたしも祈ってます。
    マンU戦でハッシーに先越されちゃったからなぁ…

    yuri★さん!あたしは12/14付の播ちゃんブログの加地さんにやられました><

  6. 朝、この物語を見つけた時は子供がまとわりついて
    じっくり読めず、日付けが回って一人静かにkajidaisanji worldのx'masを堪能しました。
    プレゼントなんて最近もらってないもんなぁ〜
    なんてぼやいていたけど、何気ない小さな幸せは
    実は誰かが私のことを想ってくれていたからだったのか・・明日、何かいい事あったらそれは私からkajidaisanjiさんへのプレゼントです。

  7. わぁ、今年は純粋にいい話だったw
    私の連れ合いとこの話のヒロインの名前が同じなのは
    サンタさんが届けた小さな幸せなんでしょうかね

  8. 「企業秘密だよ。企業じゃないけど。」って懐かしいですね。
    kajiritaiさんと同じく、私もカジオログが更新されて、しかも1番にコメントできたときが小さな幸せを感じる瞬間です。

  9. ふつうに終わって良かったな♪
    でも「ミタっち」が気になるっ☆☆☆

  10. はじめまして!
    いい話。。。kajidaisanji多才やな〜。
    なんか伊坂小説っぽくて好きです!!

  11. 加地さんがkajidaisanjiさんに愛されて、このブログが更新されることが私の幸せ。
    この幸せも誰かが願ってくれていることなのかしら。。。
    加地さんの幸せと、kajidaisannjiさんがいいネタに出会えることを日々祈っています☆

  12. 今年もどこか期待して楽しみにしていました(・・*)
    kajidaisanjiさん、どうもありがとうございました。私にとって(見たみなさんもそう思ってると思います。^^)最高のクリスマスプレゼントになりました〜♪

  13.  くみこおお。。。
     加地さんの何でもいいから来年も活躍がみたいですな、今年もいい小説ありがとうです。

  14. >>pepoさん
    片思いはせつないです。その恋がどんな結果になろうとも(結果すら出なくても)、そのせつない思いはきっと無駄じゃない、と、思いたい私です。

    >>yuri★さん
    リアルでした?あはは。と、思わせぶりに笑ってごまかしておきます。

    >>drunkdrummerさん
    せっかく誰かが贈ってくれたささやかな幸せを、見逃さず素直に喜べる、そんな自分でありたいものです。

    >>yaheiさん
    我々の願いなど軽ーくスカしてしまう加地さんなのでした…

    >>kajiritaiさん
    ばかばかしい記事を毎回読まされるのが果たして幸せなのか不幸なのかは分かりませんが、これからもボチボチ更新していきます。

    >>北杜魚さん
    そう言われたら、ちょっといいことありましたよ。受け取りました、ありがとうございます。

    >>もんもんさん
    そうか、ミタっちの正体はもんもんさんだったのか…

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