クロスマスイブ – I(2)

特賞がサッカーボール一個って、どういうこと?自宅の床に置かれたサッカーボールと向き合うように座り、映里は考えていた。せいぜい四等か五等くらいじゃないの?はっぴの男や周りの人がなぜあんなに喜びうらやましがっていたのか、さっぱり理解できない。このボールが来年のワールドカップで使われる新しいボールであることは、映里もテレビで見て知っている。だからといって特賞の価値があるだろうか。

「でも」
声に出して言い、ボールを抱えて床にあお向けに寝転がる。映里は少なくともひとり、このサッカーボールをもらって嬉しがるだろう男を知っている。来年のワールドカップを一緒に観に行こうと約束したその人とはしかし、今はもう、会っていない。映里が、そう望んだから。

寝転がったまま両手でボールを持ち上げ、そっとおでこに当ててみる。つるつると冷たい感触が伝わる。そのまま目を閉じてみると、両手とおでこで感じるその丸い物体は、過去のいつかの自分から、今日の自分に突きつけられた問いのようなものに思われた。

私が望んだことって?私が望むことって?

映里は分かった。その答えは、もうずっと前から私の中にあったのだ。ただそれを引き出す問いと向き合うことを、私は今日まで避けていたのだと。

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